SecondSource一次情報から判断を組み立てる

停止令で遅れたのは約 2.3GW——この数字は遅延だけを数え、撤回と移転はゼロと記録する

手前に三脚に据えた赤い測量機、奥には門を閉ざしたまま止まっているデータセンターの敷地。左下では荷を積んだトラックが、杭だけが残る空き地のそばの土の道を画面の外へ走り去っていく。

SecondSource 深掘りレポート #37

本稿は 2026 年 9 月 24 日に掲載し、10 月 23 日に現行の基準で書き直した。主な判断は変えていない。

本稿の要点

停止令は多いのに、実際に延期された容量はわずか。停止令は効いていないのか?(約2.3GW)

米国各地で約 300 本の地方の命令と、ニューヨーク州の州令 1 本が、データセンター(大型コンピューター施設)の新設を一時停止または禁止している。本稿ではこれらをまとめて停止令と呼ぶ。停止令は建設をどれだけ遅らせたのか。調査会社 SemiAnalysis は 9 月、停止令で実際に遅れているデータセンター容量を約 2.3GW と算出した。内訳は地方の停止令が約 1.5GW、ニューヨーク州令が約 0.8GW である。GW は 10 億ワットで、データセンターが使える電力量を表す。この数字は元の場所で待っている案件だけを数える。撤回された案件と、移転や設計変更をした案件は、本稿ではまとめて退場と呼び、どれもゼロと記録される。本誌は 9 月 16 日に 2.3GW をもとに五つの判断を書いた。本稿はそれを一つずつ検証し直す。

結論を先に言う。2026〜27 年の完成量を予測する人は、停止令を理由に予測を下げなくてよい。ただし 2.3GW は退場を数えられないので、停止令は効いていないと言う根拠にはならない。持ち帰ってほしい点は三つ。

一、この 2 年の完成量を予測する人は、下げない理由を「2.3GW が小さい」から「この 2 年の案件の多くはすでに着工したか許可をそろえている」に改めてほしい。本誌は 9 月 16 日、年で分けていない 2.3GW を 2027 年の全米の新規分で割り、遅れは新規分の約 6% だとした。この 6% を引用する人は使わないでほしい。

二、2.3GW を根拠に停止令は効いていないと言う人は、退場を数え落としている。エネルギーニュースサイトの Heatmap は、今年第 1 四半期に少なくとも 20 件の計画が地元の反対を受けて撤回されたと数えた。停止令に当たった案件に限らず、それらが別の場所で建ったかは誰も追っていない。それなのに SemiAnalysis も、ニューヨーク州が全面的に禁じても AI の進歩は 1 日足らずしか遅れないと推計したプリンストン大学の Arvind Narayanan 教授も、案件は移れる、つまり別の場所で建つと仮定している。どちらかの推計を引用する人は、「停止令の影響は小さい」を確定した話として扱うべきではない。

三、開発業者も融資する側も「停止令は案件を移らせるだけ」と決めてかかるべきではない。まず撤回率、つまり停止令の範囲内と範囲外で案件の何割が撤回されたかを比べる。次に、撤回された案件が別の場所で埋め合わされたかを見る。撤回率はまだ誰も計算していない。

本稿では SemiAnalysis の数え方を物差しと呼ぶ。停止令を一本ずつ、同社が追跡する 6,000 余りのデータセンターに突き合わせ、11 の条件(たとえば停止令がその土地に及ぶこと)がすべてそろったときだけ遅延と数える。第 2・3 節で 2.3GW を、第 4・5 節で物差しが数えないものを、第 6 節で足りない読み値を見る。

1. まず言葉を分ける——停止令、遅延、退場

停止令の結果は三つ。延期はその一つで、移転と撤回は「退場」。撤回の線はイメージで、Heatmap の集計では20件以上(約2.3GW)

停止令はたいてい新規申請の受け付けを止めるだけで、発給済みの許可はほぼ取り消さない。データセンターは許可を取ってから完成まで数年かかる。

停止令が実際に案件を止めたとき、結果は三通りある。

  • 遅延:案件は元の場所に残り、まだ建てるつもりで、停止令が切れるか解除されるのを待つ。開発業者が停止令を訴訟で争い、裁判の間その場で待つ場合もここに入る。
  • 移転・設計変更:別の場所へ移るか、設計を変える。たとえば停止令が送電網への接続だけを対象とするとき、自家発電に切り替える。
  • 撤回:開発業者が計画を手放す。

後の二つが退場である。停止令がどこに及ぶかは、誰が出したかで決まる。市の停止令は市域内だけ、郡の停止令はふつう郡内の市に属さない地域だけを対象とする。停止令がそもそも及ばない案件は、場所も設計も変えず用地だけが停止令の範囲から外された案件(本稿では範囲外しと呼ぶ)を含め、三つのどれにも入らず、影響なしと数える。

二社は何を数えているか。 SemiAnalysis のリストはデータセンターを 1 件ずつ記録しており、全米の完成量を予測する同社のモデルの土台でもある。物差しは 11 の条件で、リストから遅延した案件を選び出す。Heatmap はニュースと公的記録を調べ、地元の反対を受けて撤回された計画を数える。SemiAnalysis の約 2.3GW はサーバー用の電力で測った値だ。Heatmap の少なくとも 3.5GW は今年第 1 四半期に撤回された計画で、キャンパス全体の電力需要として測っており、サーバー用の電力より大きい。両者の大小を比べたり足したりはできない。

9 月 16 日の五つの判断。 本誌(SecondSource)の検証結果:

9 月 16 日の判断検証の結果
一、「停止令の波が 2026〜27 年の引き渡しを潰す」という心配は下ろしてよい成立(第 3 節)
二、遅延量は 2027 年の新規分の約 6%取り下げ(第 3 節)
三、この物差しには、用地未定の 2028 年以降の案件が見えない書き直し:見えないのは退場であって、2028 年以降ではない(第 5 節)
四、SemiAnalysis と Narayanan は方法が違うのに結論が一致し、互いを裏付ける狭める:両者とも案件は移れると仮定している(第 5 節)
五、地元の抵抗は建設を停止令の及ばない場所へ移す:市域内、承認済みの土地、自家発電方向は個別の例で支持されるが、件数の集計はない(第 3・4・6 節)

だから 9 月 16 日の記事を引用する人は、右の欄に従ってほしい。二は使わず、三と四は本稿の版に置き換え、五は方向としてだけ扱う。

2. 2.3GW の数え方——11 の条件をすべて満たして初めて遅延になる

停止令の範囲内の約20GWのうち、11の条件をすべて満たして延期と数えられるのは1,525MW(図は最も多く案件を外す三つを描く)。ニューヨーク州は20GWの外で別枠に数え、延期は約0.8GW、合計約2.3GW(1,525MW)

2.3GW は二つに分かれる。地方の分は、SemiAnalysis が有効な約 300 本の停止令を一本ずつ、リスト上の土地に突き合わせた。

  • 停止令の範囲に入る容量:約 20GW。
  • 実際にそのために遅れている容量:1,525MW(MW は 100 万ワット。1,525MW は約 1.5GW)。前の数字の 7.6%(SemiAnalysis の計算)。

ニューヨーク州の分は別枠で数える。Hochul 知事の 7 月の行政命令は、50MW 以上のデータセンターの州の許可申請だけを止める。この命令がかかる容量は約 1.4GW で、SemiAnalysis は実際の遅れを約 0.8GW と見積もる。この半分を超える比率は、分母が違うので 7.6% と比べられない。7.6% はふるいにかける前の、地方の停止令の範囲に入る容量すべてで割った値、ニューヨークの比率はすでに一度ふるいにかけた容量で割った値である。

20GW を約 1.5GW までふるうのが 11 の条件である(すべて付録に載せた)。最も多くの案件を外す三つは次のとおり。

  • 停止令がその土地に及ぶか:たとえば郡の停止令は、市域内のキャンパスには及ばない(第 1 節)。
  • 案件は、凍結された許可をまだ必要としているか。
  • 案件がその許可を申請するまで、どれだけ間があるか:完成が 2028 年以降で、停止令が 3〜6 か月しかないなら、停止令が切れてから申請すればよい。

1.5GW はほぼすべてが三つの案件から来ている(付録参照)。信じてよいのは「遅れはごくわずか」ということで、正確な数字ではない。停止令が長いほど、「停止令が切れてから申請する」条件で外れる案件は減る。だから停止令を追う人は、本数に加えて、新しい停止令の期間が延びているかを見るべきだ。

3. 2.3GW は正しい、誤りは 38GW で割ったこと——2027 年の案件の多くは停止令の関門をとうに越えている

2.3GWは正しい。誤りは38GWで割ったこと:その年の案件に停止令はほぼ及ばない(38GW)

要点の一で見たように、下げなくてよいのは案件が許可の関門を越えているからだ。9 月 16 日の二つ目の判断は、2.3GW を SemiAnalysis が予測する 2027 年の米国の新規分 38GW で割り、6% を出した(本誌の計算)。二つの数字は、対象とする期間が合っていない。

38GW は単年で、停止令はほとんど及ばない。 SemiAnalysis によれば、この 38GW(サーバー用の電力で測った値)のうち 22GW はすでに建屋の工事中で、残る 16GW も大半は資金を確保し、造成を進めている。工事中か、許可をそろえて着工間近の容量には停止令がまったく及ばず、それは 2026 年のすべてと 2027 年の大半にあたる。

2.3GW は年で分けていない。 いま遅れている容量の合計で、2027 年の案件もあれば、もっと後の案件もある。合計を単年の新規分で割っても、その百分率にはっきりした意味はない。

この 2 年を遅らせうるのは別のことだ。 ゴールドマン・サックス(Goldman Sachs)は 5 月、今後 1〜2 年に稼働予定の容量のうち、予定どおりに稼働するのは 5〜6 割にとどまると見積もった。SemiAnalysis は、設備の納期などの問題がすでに工期を縛っている可能性を書いている。だからこの 2 年の完成量を予測する人が見るべきは設備の納期のような問題で、停止令ではない。

4. この物差しは、移転も撤回もゼロと記録する

この物差しは移転と撤回をゼロと数える。Heatmap は地元の反対で撤回された計画を少なくとも20件数えた(停止令がかかった案件に限らない)。投資額は合計417億米ドル超で、損失ではない

要点の二の退場は、物差しの決まりから来る。11 の条件の一つは、取り消し・撤回・縮小・放棄された案件は遅延と数えない、というものだ(縮小した分は撤回に入る)。SemiAnalysis はさらに、停止令が実際に工期を止めても、開発業者はふつう移転するか、設計を変えるか、訴訟で争うことができ、放棄はしないと書く。第 1 節の分け方では、訴訟で争う案件はなお遅延で、移転と設計変更は退場である。

SemiAnalysis が予測したいのは全米の完成量で、移った案件が別の場所で建てば総量は減らない。だからこの記録の仕方は筋が通っている。範囲外しの案件は、影響なしと記録される。テキサス州ブラウンズビル市で停止令の採決の数日前、市当局と、市域内にデータセンターを建てる計画だったイーロン・マスク(Elon Musk)側が、その 444 エーカーの用地を市域から外し、市の停止令が及ばないようにした。

撤回を数えている調査もあり、その数は小さくない。 Heatmap の 5 月の報道によれば、2026 年の最初の 3 か月に少なくとも 20 件の計画が撤回された。投資額は合計 417 億米ドル超、電力需要は少なくとも 3.5GW にのぼる。7 月の更新によれば、過去 5 年に地元の異議を受けた約 430 件のうち約 4 割が最終的に撤回され、最近は約半数に上がっている。

Heatmap が数えるのは 2.3GW とは別の集団なので、数字は矛盾しない。ただ、反対を受けた計画の約半数が撤回されており、SemiAnalysis の「ふつうは移れる」という言い分は、まだ確かめられていない。

撤回の数は上限である。 計画の多くは投機的だ。ゴールドマン・サックスによれば、開発業者はよく複数の場所に同時に申請し、条件のいちばんよい一つだけを進める。だから撤回の数で損失を見積もる人は、それを上限として扱うべきだ。

5. この物差しに見えないのは退場であって、2028 年以降ではない

三つ目の判断は、この物差しには、まだ用地も決まっていない 2028 年以降の案件が見えないと言った。この判断は半分しか当たっていない。

発表済みの 2028 年以降の案件は、リストに載っている(SemiAnalysis の 6 月の別のレポート)。物差しの「停止令が切れてから申請する」条件がそれを扱う。

見えないのは退場である。 移転・設計変更した案件も撤回された案件も、どの年でもゼロと記録される。停止令を見越して提案されなかった案件はどのリストにもなく、三つ目の判断が当たっていたのはこの点だけで、この物差しに特有の死角ではない。撤回は Heatmap が数えているが、移転と、提案されなかった案件について本誌は公開の数字を見つけられなかった。

四つ目の判断は狭める必要がある。 Narayanan の換算はこうだ。AI の計算効率は毎年上がるので、止められた計算能力は少し遅れて追いつく。この換算は、止められた容量の 9 割が別の場所で建つことを前提にしていると明記している。2.3GW は移転を遅延なしと記録するので、停止令の影響全体を表すものとして使えば、やはり案件は移れると仮定することになる。前提が同じなら、互いの裏付けにはならない。

SemiAnalysis は、アトランタ都市圏での例を記録している。Fayetteville 周辺の活動家が、隣の郡の一時停止を引き合いに出し、地元でも同じ規制を求めた。こうした追随が増えるほど、案件は移れなくなる。だから 2.3GW や Narayanan を根拠に停止令の影響は小さいと言う人は、まず隣の郡が追随していないかを見るべきだ。

6. 案件が移ったのか消えたのかは、停止令の範囲内外の撤回率を比べて初めてわかる

2.3GWという延期量は正しい。停止令が案件を退場させたかは、停止令の範囲内外の撤回率を比べる必要がある(2.3GW)

要点の三の撤回率は、二段階で読む。

第一段階:停止令は撤回を余分に生んだか。 リスト上の案件を停止令の範囲内と範囲外に分け、それぞれ何割が撤回されたかを計算する。近ければ、停止令は撤回を余分に生んでいない。範囲内がはっきり高ければ、その差が停止令の生んだ分だ。

第二段階:余分な撤回は別の場所で埋め合わされたか。 SemiAnalysis の全米予測が下方修正されるかを見る。修正されなければ案件は移っており、停止令を理由に修正されれば、停止令が案件を潰している。

計算されるまでは、個別の例と一方の言い分しかない。

  • 設計変更で埋め合わせ:テキサス州の Abbott 知事の命令で、ERCOT(テキサス州の電力網の大半を運営する機関)の接続待ちの列にある案件は、当面次の審査段階に進まない。これは停止令ではない。SemiAnalysis の見積もりでは、送電網から電力を受ける案件は 3〜4 か月ほど長く待つ。自家発電の案件は影響を受けず、しかも増え方が加速しており、この遅れで減る建設量を埋め合わせる。
  • 移転:Meta の元エネルギー戦略担当ディレクター、Peter Freed は 7 月に Heatmap に対し、規制を通した地域で手を止めてよそへ移る開発業者が増えていると語った。ただ、よそへ向かったことは、よそで建ったことと同じではない。
  • 案件の消滅:マイクロソフトの 2026 会計年度の年次報告書は、州と地方の停止令をリスク要因に挙げている。予防的な列挙で、重みは軽い。

こうした個別の例と一方の言い分は、どちらの側も支えきれない。だから撤回率が計算されるまでは、2028 年以降の案件を計画する開発業者は、移転で停止令を避けられると当てにすべきではない。

本誌の見立て

冒頭の問いに戻る。停止令は建設をどれだけ遅らせたのか。2026〜27 年についてはほとんど遅らせていない。案件が許可の段階をすでに越えているからだ(第 3 節)。2.3GW という遅延量は正しいが、退場は数えられない(第 4・5 節)。この件を追う人はこれから 1 年、撤回率を誰かが公表するか、SemiAnalysis が 2028 年の全米予測を停止令を理由に下げるかを見るべきだ(第 6 節)。

これは誰にとって何を意味するか

2028 年以降の用地を選ぶ開発業者は、互いの停止令に追随しあう同じ地域に予備の土地をすべて置かないほうがよい。新しい案件を審査する融資側は、撤回率が出るまでは遅延量だけでなく、その郡と隣の郡が停止令を進めていないかを見るべきだ。

この判断を覆す条件

1. 停止令の範囲内外の撤回率が公表され、両者が近い:要点の二にある退場への警告を取り下げる。

2. 移転の件数が公表され、退場した案件の多くが別の場所で建っている:案件は移れるという前提が成り立ち、要点の二の留保を取り下げる。

3. 2027 年の米国の実際の完成量が 38GW をはっきり下回り、その差を停止令に帰せる:第 3 節の結論は誤り。答え合わせの日は暫定で 2028 年 3 月 31 日。

前の二つの観察期限は 2027 年 6 月 30 日。三つの条件の閾値と期限は、いずれも本誌が独自に設けた。

付録:数字の出どころ

2.3GW の内訳

部分範囲に入る容量実際の遅延算出元
地方の停止令(郡・市・町、有効なもの約 300 本)約 20GW1,525MW(範囲に入る容量の 7.6%)SemiAnalysis
ニューヨーク州の行政命令約 1.4GW約 0.8GWSemiAnalysis の推計
合計—約 2.3GWSemiAnalysis

地方の遅延 1,525MW は、ほぼすべてが三つの案件から来ている。オハイオ州のアマゾンのクラウド拠点、ペンシルベニア州の開発業者のキャンパス、コロラド州の案件である(SemiAnalysis の公開部分には案件ごとの MW はない)。

SemiAnalysis の 38GW、20GW、2.3GW は、いずれもサーバー用の電力容量(IT 容量)を測っている。Heatmap の 3.5GW は、電力需要(electricity demand)である。

二つの比率

  • 「約 6%」= 2.3GW ÷ 38GW。本誌が 9 月 16 日の平易な説明で使った計算である。この比率にはっきりした意味がない理由は、第 3 節に書いた。
  • 7.6% = 1,525MW ÷ 約 20GW。SemiAnalysis の計算で、停止令の範囲に入る容量のうち、実際に遅れた割合を示す。
  • ニューヨーク州:約 0.8GW ÷ 約 1.4GW で、半分を超える。SemiAnalysis の見積もり。1.4GW はすでに一度ふるいにかけられており(どうふるったかを SemiAnalysis は説明していない)、分母が小さいので、7.6% とは比べられない。

その他の集計と傍証

  • SemiAnalysis のデータ:データセンターのリストは、不動産登記、許認可、電力データ、情報公開請求、衛星画像から 1 施設ずつ作られている。停止令データベースは、各停止令の経過を記録する。提案、成立、期限切れ、解除、置き換え、否決までである。遅れているペンシルベニアのキャンパスは、先に土地と電力を確保してからデータセンター事業者に引き渡す開発業者のものだ。
  • 停止令の本数:これまでの数字は、大半が停止令の本数だった。7 月の 127 本から、9 月の 300 本超まで数え上げられてきた。本数は、どれだけの地域が反対しているかを示す。どれだけの電力が止まったかは示さない。SemiAnalysis のデータベースには、17 州の地方の停止令と提案が 400 件超入っており、期限切れや否決のものも含む。有効なものは約 300 本だ。
  • Heatmap の数え方:データチームがニュース、公的記録、案件の発表を調べ、地元の反対を受けて撤回されたデータセンター計画を数えている。7 月の記事でいう「異議」は、訴訟、現地での抗議、紛糾した公聴会、広告戦を指す。過去 5 年に異議を受けた案件は約 430 件、いま争われているのは約 200 件。州ごとの撤回率はミシガン州 71%、インディアナ州 56%、テキサス州約 17%。
  • リストに載らない案件:発表済みでも SemiAnalysis が実現の見込みが低いと判断した案件はリストに載らず、物差しも数えられない。本誌はこの種の公開の数字を見つけられなかった。
  • 撤回率の比べ方:リストが移転を元の場所での撤回として記録しているなら、停止令の範囲内の撤回率が高めに出る。移転先も確かめて、移ったのか撤回されたのかを見分ける必要がある。
  • Narayanan の計算:Narayanan は、AI の推論効率が年に約 5 倍、データセンター容量が年に約 25% 伸びるとして、止められた計算能力を、効率の向上で同じ能力に追いつくまでの時間に換算した。典型的な州の 1 年間の停止令で 5〜10 時間、ニューヨーク州の全面禁止は、9 割が別の場所へ移るという前提で 1 日足らず。Narayanan 自身、分析は AI で行い抜き取りで確かめただけだと述べており、具体的な数字は正確な値として扱えない。
  • 77 か所のキャンパス:ある金融サイトは、調査チームが当初 77 か所・約 20GW を洗い出し、1 件ずつふるいにかけた結果 3 か所が残ったと伝えている。これは又聞きで、本誌は元の発言を読んでいない。
  • 投機的な計画:SemiAnalysis は 6 月、米国の送電網で大口需要の接続待ちがすでに 1,000GW を超え、その大半がきわめて投機的だと書いた。
  • Data Center Watch(データセンターへの地元の反対を追跡する調査団体):2026 年第 1 四半期に、少なくとも 75 件、約 1,300 億米ドルのデータセンター案件が阻止または遅延された。定義には、地元による否決と、開発業者による自主的な撤回の両方が入る。本誌は 8 月、あるブルームバーグ記者の「今年の最初の 3 か月で 75 か所」という発言を記録した。その際、集計方法はまったく分からないと書いた。数字と期間を照らし合わせると、この報告書である可能性がきわめて高い。
  • ゴールドマン・サックス:5 月に、2027 年の米国の新規容量を 36.3GW と予測した。SemiAnalysis の 38GW に近い。ただしゴールドマン・サックスは、これがサーバー用の電力か系統接続の容量かを明記していない。だから本誌はこの数字を裏付けに使わない。
  • 自家発電の受注:SemiAnalysis は 9 月初め、確定した自家発電設備の受注を 75GW と数えた。行き先はテキサス州が最多である。本誌は、この受注が何年分か、すべてデータセンター向けかを確かめられていない。そのため、単年の 38GW とは比べない。
  • マイクロソフトの年次報告書:リスク要因の原文は、州と地方の停止令の帰結として、案件の遅延、開発機会の縮小、コストの増加がありうると書いている。
  • ミシガン州:すでに 45 本の地方の停止令が成立しており、全米で最も多い。ところが SemiAnalysis が追跡する案件のうち、ミシガン州で停止令の範囲に入る容量は実質ゼロだ。本誌の推測では、反対運動が計画の段階で案件を潰しており、案件は停止令で遅れる段階まで生き残らない。開発業者がもともとミシガン州をあまり選ばないだけかもしれない。SemiAnalysis も Heatmap もそうは言っておらず、本誌にはどちらなのか見分けがつかない。

ニューヨーク州とラウドン郡の詳細

  • ニューヨーク州の 7 月の行政命令:法律事務所 Foley & Lardner の要約によれば、一時停止するのは、50MW 以上のデータセンターに関する州の裁量的な許可申請だけである。州の環境部門がすでに完備と認めた申請は、影響を受けない。地方自治体が出す許可も、対象外である。固定の終了日は書かれていない。
  • バージニア州ラウドン郡:地元メディアによれば、9 月 15 日の議決は、最長 12 か月の新規申請の一時停止案を起草するよう職員に指示するものだった。承認済みの案件は承認を保つ。最終議決は 10 月に予定されている。

11 の条件(SemiAnalysis の列挙。一つでも欠ければ、その停止令は案件を遅らせたことにならない)

1. 停止令がその土地に及ぶ(郡の停止令はふつう、市域の内側には及ばない)。

2. 停止令が成立し、まだ有効である。提案段階のもの、失効したもの、解除されたもの、置き換えられたものではない。

3. 停止令の期間が、案件のスケジュールと重なる。

4. 案件がその許可をまだ取っていない。まだ着工していなくても、許可はすでに手元にある案件は少なくない。

5. 案件の時期が先すぎない。稼働予定が 2028 年以降で、停止令が 3〜6 か月だけなら、期限切れを待てばよい。

6. 停止令がこの用途を対象にしている。多くの停止令は、一定の電力や面積を超える大型施設だけ、あるいは暗号資産のマイニングだけを対象にする。

7. 案件が本当にその許可を必要とする。たとえば連邦の土地に建て、別の許可手続きを通る案件には要らない。

8. 開発業者が設計を変えて回避できない。たとえば停止令が送電網への接続だけを対象にするなら、開発業者は自家発電に切り替えられる。

9. 案件がまだ進んでいる。取り消し、撤回、縮小、放棄となったものは数えない。

10. 回避に使える既存の権利や別の道がない。たとえば開発協定、既得権、新しい法律をさかのぼって適用しないという保護。

11. 適用される例外がない。たとえば公益事業の適用除外、同意判決、州法が地方の規則に優先する場合。

本誌の 9 月 16 日の判断の補足

五つの文それぞれの結果は、第 1 節の表に示した。三つ目の文が自ら置いていた覆す条件は、「SemiAnalysis が公開するモデルに、まだリストに載っていない層が含まれ、その層の数値も低い」だった。この層があることは公表済みだが、数値は公表されていない。だから半分だけ成り立った。

本誌が追うトレンドとの関係

本誌は 10 月 7 日、トレンド「米国のデータセンターへの抵抗は、最終的にどの階層の政府に落ち着くか」を新設した。追っているのは誰が決める権限を握るかで、停止令の効果ではない。停止令の効果(遅延、移転、撤回)を軸にしたトレンドは、まだ作っていない。最も重要な数値である停止令の範囲内外の撤回率はまだなく、撤回を数えているのも Heatmap 1 社だけだ。本稿にはトレンドツリーを付けない。撤回を数える 2 社目が現れたら作る。覆す条件は本稿の第 1・2 条を使い、観察期間は 2027 年 6 月 30 日までとする。


この記事が依拠した出典

以下は、この記事が引いた事実の記録から機械的にまとめた出典で、各行はそのうち一つの事実の出どころである。原文を読んだか報道経由かは、本文各段の説明に従う。

本稿がほかに直接読んだ原文書(2026-10-23 の書き直しで、原文と一文ずつ照合した):

本記事は日本語版・英語版・中国語版と同一の調査と判断にもとづいて書かれています。出典にはリンクを付け、原文書と報道を区別し、確かめられなかった点を明記しています。