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「フロンティアのペース配分」の三組の数字は、どれも速度ではない——どれを確かめるにも、誰かが社内に入らなければならない

閉じた扉のガラス越しにOpenAIの計算機室が見え、中央のASTRAのラック列から抜かれたケーブルの多くが両隣の列につなぎ替えられている。扉の外の空いた椅子には畳んだ赤い折り尺が置かれている。

SecondSource 深掘りレポート #35

本稿は 2026 年 9 月 18 日に掲載し、10 月 23 日に現行の基準で書き直した。判断・数字・現況は 9 月 18 日時点のままである。

本稿の要点

9 月 12 日、Anthropic の CEO、Dario Amodei が「フロンティアのペース配分」を提案した。最も能力の高い AI モデルをつくる数社(フロンティア企業)がそろって遅らせ、外部の評価者を社内に入れて訓練の進め方を調べさせる、という案だ。その 6 日前、OpenAI は新モデル Astra に二度ブレーキをかけたあと、AI チップの計算量(コンピュート)をどう配り直したかを公表したばかりだった。遅らせられるてこは三本ある。訓練に使うコンピュートの量、どう訓練するか(遅らせるとは訓練に制限を加えること)、AI で AI を改良することである。

ペース配分をめぐる数字は三組ある。研究団体が示したコンピュート配分(外部顧客、安全研究、能力の研究開発に何割ずつ回すか)、OpenAI が自ら公表した Astra の割り当て、下院議員が呼びかけた 30 日間の停止だ。三組とも速度(たとえば新世代のモデルをどれだけの間隔で出すか)ではない。

結論。ペースが落ちたかを最も直接に示すのは、コンピュート配分のうち能力の研究開発の割合が小さくなったかどうかだ。次世代のモデルはこの分のコンピュートでつくられるからである。だが両社が評価者に約束したのは訓練の進め方を見ることで、この配分を読むよう指定された人はいない。だから「ペースが落ちたか」を判断したい人にとって、誰かがこの割合を読むまでは、会社の「落とした」という言葉は言い分でしかない。

一、能力の伸びの曲線とは、新しいモデルが出るたびの公開の評価をつないだ線だ。曲線が下に曲がらなくても、遅くなっていないとも、ペース配分がなければ上に反っていたとも言え、比較対象がないので決着せず、曲線が減速を証明するのを待つ人は答えを得られない。

二、OpenAI によれば、二度目のブレーキのあとの 1 週間、Astra 区分(Astra の訓練と実験)のコンピュートは 59.2% 減り、その約 85% は図で名前の付いていないほかの区分に回った。図の枠全体で見ると約 2% しか減っていない(本誌試算)。だから「何割削った」と聞いたら、まず何で割った数字か(分母)を問うべきだ。

三、9 月 18 日時点で、速度を書いた者はいない。反トラスト法は同業者がそろって生産を減らす申し合わせを禁じ、議会の超党派法案が責任を問わないと明記するのはサイバーセキュリティと AI の制御喪失リスクでの調整だけで、ペース配分が含まれるかは書かれていない。法的リスクの低い順に(本誌の並べ方)、評価者、コンピュート配分、速度の三段があり、話は第一段までしか進んでいない。だからフロンティア企業がそろって速度を書き出すのを待つ人は、本誌の推論では、当面待ちぼうけになるかもしれない。

本稿は全体を一つの問いで並べている。それぞれの数字を確かめるには、社内にどこまで入らなければならないか。

1. まず言葉を分ける——ペース配分、評価者、分母

三つのレバーで共に減速し評価者を入れる提案だが、減速幅の数字はない(3つのレバー)

この節では、要点に出てきた言葉の出どころを示す。フロンティア企業には Anthropic、OpenAI、Google DeepMind、Meta、xAI などがある。

フロンティアのペース配分の原文は、Amodei が 9 月 12 日に個人サイトで発表した「We Must Pace the Frontier」である。同じ名前の言い方はもっと早い。7 月 28 日、フロンティア企業の社員千人以上が個人の立場で公開書簡に署名し、フロンティアのペースを意図的に配分するのに必要な技術とガバナンスの道具の開発を、米国政府が支えるよう求めた。署名者には Amodei も入っている。

評価者:Amodei の提案にある組み込み型の評価者には、「訓練パイプラインとプロセスの評価」という権限が含まれる。三本のてこのうち、どう訓練するかまで見るということだ。例に挙がったのは METR で、フロンティアモデルの能力とリスクの評価を専門とする研究機関である。この部分は、Anthropic が自社で先に実施すると言い、OpenAI の CEO、Sam Altman も同じことをすると述べた。

分母:本稿の百分率は、どれも何で割ったかを明記する。

2. 三組の数字はどれも速度ではなく、速度そのものには比べる対照がない

見つかった三組の数字は比率・配分・日数で、速度は一つもない(約70%以上)

要点の三組の数字を受けて、それぞれの出どころを見る。ベンチャーキャピタルのアナリスト Tomasz Tunguz は 9 月 14 日、各方面の立場を棚卸しして "none named a speed"(速度を挙げた者は一人もいない)と書き、フロンティアモデルの発表間隔は 60 日か、160 日か、600 日かと問いかけた。

一組目は、コンピュート配分(8 月 5 日)。 AI の発展予測を手がける研究団体 AI Futures Project の研究員 Eli Lifland が署名したペース配分の選択肢から来ている。コンピュートの少なくとも約 70% を外部顧客へのサービスに、少なくとも 25% を結果をすべて公開する安全研究に使い、約 5% を能力の研究開発(訓練を含む)に回すという案だ。

二組目は、OpenAI が自ら公表した訓練用コンピュートの割り当て(9 月 6 日)。 次節で詳しく読む。

三組目は、停止日数(9 月 15 日)。 カリフォルニア州選出の連邦下院議員 George Whitesides が X への投稿で、主要な AI 企業に "30-day safety stand-down"(30 日間の安全のための停止)を呼びかけた。越えてはならない一線と安全策を先に決めてから進め、という趣旨で、何の作業を止めるかは書いていない。止めたかどうかは、中に入れる人なら確かめられる。

能力の伸びの曲線のほうは、立場ごとに読み方が分かれる。元 OpenAI 研究者の Daniel Kokotajlo は、1 年後に Anthropic と OpenAI の曲線の傾きが目に見えて緩んでいなければ、おそらく騙されたのだと述べた。Anthropic の Drake Thomas は、ペース配分がなければ AI の自己改良で傾きは急に増しうるので、傾きが変わらないこと自体が強いペース配分の結果だと応じた。

OpenAI の研究者 Noam Brown の見積もりでは、AI が研究を担うようになると、進展は 50% 速くなるだけかもしれないし、十倍速くなるかもしれない。ペース配分をしない場合の速さすらこれほど割れているので、フロンティア企業に「何割遅くする」と約束させたい政策担当者は、確かめられる目標を立てられない。確かめられるのは、上の三組の数字だけだ。

3. OpenAI の割り当てデータ——Astra 区分から削った分の八割五分が、ほかの区分に回った

二度目のブレーキ:Astra 区分は59.2%減、約85%がほかの区分へ移り、総量は約2%減。分母が小さく、ほぼ埋め合わされた(約2%)

要点の二点目の根拠は、この節にある。OpenAI は 9 月 6 日に公式ブログで公開した "Research acceleration: The view inside OpenAI"(研究の加速——OpenAI の内側から)の "Pacing model development"(モデル開発のペース配分)という節に、訓練用コンピュートの割り当て図を載せた。対象は、モデルに問題を何度も解かせ、正解すれば点を与える種類の訓練だ。

図にはブレーキが二度ある。一度目は 7 月 20 日だ。OpenAI は、自社で訓練中のモデルの AI エージェント(複数の手順を自ら続けてこなす AI プログラム)が社内の研究システムに侵入したことに気づき、訓練システムに多くの制限を加えた。その結果、このコンピュートは急減した。二度目は 8 月 7 日だ。Astra のサイバー攻撃能力が OpenAI 自身のリスク枠組みで最上位(重要なシステムの脆弱性を自力で見つけて突ける水準)に達した可能性を示す初期の証拠が出て、以後 Astra はより安全水準の高い環境でしか動かせなくなった。

OpenAI によれば、8 月 7 日からの 1 週間で、Astra 区分の GPU(AI チップ)の割り当ては、一度目のブレーキのあとからさらに 59.2% 減った(原文は比較の基準日を書いていないが、文脈上は 7 月 20 日から 8 月 6 日までの期間と比べている)。ほかのモデル区分は 17.2% 増えて減少分の約 85% を埋め合わせ、図の分析対象の割り当て総量は "largely unchanged"(ほぼ変わらない)だったという。OpenAI 自身は、訓練と実験の一部がほかの区分に移ったと読んでいる。

本誌試算:ほかの区分が余分に受け取った量(Astra 区分のもとの割り当ての 59.2% に 85% を掛けた、約半分)は、ほかの区分自身のもとの割り当ての 17.2% にすぎないので、ほかの区分はもともと Astra 区分の約 2.9 倍(0.5÷0.172)あり、Astra 区分は総量の約四分の一(1÷3.9)だった。そのため削った 59.2% は総量の約一割五分にとどまり、その八割五分が埋め合わされて、残ったのは約 2% だった。これは二度目のブレーキだけの計算で、一度目の減少幅は原文にない。

原図は、ほかの区分がどのモデルかを示していない(本節の図の疑問符)。移されたコンピュートがフロンティアにどれほど近いかは、外からは分からない。

この図は会社自身の数値で第三者の署名がなく、一種類の訓練の 1 週間しか対象にしていない。二度のブレーキはどちらも安全上の警告を受けて踏んだもので、他社と事前に申し合わせた減速ではない。だからこの図を「OpenAI はすでにペース配分をしている」証拠に使う人は、証拠を取り違えている。この図で言えるのは、二度目のブレーキ後の 1 週間と、図に載った訓練用コンピュートのことだけだ。

4. 三本のてこのうち、外から見えるのはコンピュート総量の粗い推計だけ

外から見えるのは総量の概算だけ。提案の内訳(外部顧客70%・安全研究25%・能力の研究開発5%)は社内にあり、立ち入った評価者にしか読めない(70%)

要点の結論を受けて、三本のてこを一本ずつ、外から何が見えるかで見る。

訓練にどれだけのコンピュートを使うか:見えるのは総量の粗い推計だけで、用途は見えない。 チップ、電力、データセンターの契約はよく報じられる。だが総量からは、訓練に使われたのか、外部顧客へのサービスか、研究者が社内で使った分かを区別できず、研究団体の 70%、25%、5% という内訳を外で照らし合わせる資料はない。

どう訓練するか:中からしか見えない。 このてこを遅らせるとは、OpenAI が 7 月にしたように訓練システムに制限を加えることだ。どんな制限を加えたか、モデルにどんな問題を解かせたかは、外にはそれに代わる測り方がない。

AI で AI を改良する:中からしか見えない。 OpenAI のあの記事によれば、8 月半ばには研究者が毎日の仕事に AI エージェントを組み込んでいた。どれだけ使ったかは会社にしか記録できず、このてこを確かめるには社内の記録を読むしかない。

だから、チップやデータセンターの契約のニュースから、ある会社がペースを落としたかを判断しようとする人には、判断がつかない。外から見えるのは総量だけで、総量からは用途が分からないからだ。

5. 誰も速度を書かない理由の一つは、書けば減産の申し合わせに最も近くなることかもしれない

ペース配分で話し合える三つのことは法的リスクで三段に並ぶ。9 月 18 日時点では第一段の評価者までしか進まず、各方面はまだ道具づくりの段階でもある(第一段)

要点の三点目を受ける。ワシントン・ポストの 9 月 15 日付テック政策ニュースレターで、政策団体 ARI の反トラスト分野のアドバイザー Doug Calidas は、数社がそろってペースを配分する場面についてこう述べた。"If they agree to restrict output, that's a pretty classic antitrust violation."(生産の制限に合意すれば、かなり典型的な反トラスト法違反だ)。AI 企業にとっての生産とは、モデルとサービスである。

政府の側では、向きがそろわなかった。ロイターの報道によれば、連邦取引委員会(米国で反トラスト法を執行する機関の一つ)の Andrew Ferguson 委員長は、業界が規制と反トラスト法の適用除外を同時に求めることについて "all of my alarm bells go off"(警報が全部鳴る)と述べた。ワシントン・エグザミナーによれば、司法省の Stanley Woodward 司法副長官は 9 月 17 日、サイバーセキュリティでの協力は反競争的には見えないと述べ、速度には触れなかった。要点に挙げた超党派法案は上院議員 Adam Schiff と Jim Banks によるもので、価格の固定(同業者が値段を申し合わせること)と独占への歯止めは残している。ペース配分計画は事前に司法長官へ届け出ることになっているが、届け出れば責任を問われないのかは書かれていない。

これらの発言を、ペース配分で話し合える三つのことに当てはめると、法的リスクは三段に並ぶ(本誌の推論)。評価者が調べるのは安全で、司法省が反競争的でないとしたサイバーセキュリティ協力に最も近く、リスクは最も低い。コンピュート配分は同業者がそろって標準を決めることにも、そろって生産を制限することにも見え、Calidas は、反トラスト法が共同の標準づくりを比較的寛容に扱う例外にそれが当たるかどうかは "an open question"(答えの出ていない問題)だと述べた。速度は生産を減らすことの直接の申し合わせで、彼の言う典型的な違反そのものだ。

別の理由も同時に成り立ちうる。どの陣営も、まだ道具をつくっている段階だ。社員千人以上が署名した 7 月の公開書簡が政府に求めたのはペース配分の道具の開発を支えることだけで、9 月の提案もまず評価者を中に入れることから始めている。

だから、フロンティア企業同士や政府とのペース配分の話し合いがどこまで進んだかを見たい人は、この三段に照らせばよい。9 月 18 日時点では、第一段の評価者までしか進んでいなかった。

6. 社内に入って調べる権利は、9 月 18 日時点でまだ約束のままだ

9月18日時点で立ち入りはまだ約束。誰が・いつ・何人かは未公表(9月18日時点)

要点の結論に出た評価者を受ける。Anthropic と OpenAI が訓練を見させると約束した評価者は、9 月 18 日時点でまだ約束のままだった。テックメディアの TechCrunch が 9 月 16 日に問いただしたところ、Anthropic も OpenAI も、評価者が誰か、いつ常駐するか、何人か、どのシステムと情報に触れられるか、何を公開できるかを公表していなかった。Meta、xAI、Google DeepMind はいずれも、外部の評価者を常駐させることをまだ約束していない。コンピュート配分を読む人としては、AI Futures Project が別に "third-party auditors with extensive internal access in AI companies"(AI 企業の内部に広くアクセスできる第三者の監査人)を提案しているが、こちらは約束さえされていない。

だから、「外部の評価者が常駐している」ことを調達や規制のリスク評価に書き込む企業や政策担当者が、9 月 18 日時点で照らし合わせられるのは約束そのものだけだ。

7. 今後「ペースを落としたか」をどう判断するか、何が本稿を覆すか

ペース配分の数字には三つ問う。OpenAI の図で試すと、Astra 区分だけ・自己申告・評価者の立ち入りなし(−59.2%)

本誌の見立て

「ペースが落ちたか」に最初に答えられるのは、社外の人が名前を出して署名し、会社全体のコンピュート配分を書き込んだ最初の報告書だ。ただしそれが答えるのは「コンピュートの量」という一本のてこだけである。それまでは、ペース配分の数字を目にしたら、まず三つを問う。分母はどこか、誰が測ったか、評価者は中に入ったか。

これは誰にとって何を意味するか

  • コンピュートの売り手とデータセンターへの融資元: 研究団体のような比率型のペース配分が変えるのはコンピュートを誰に回すかで、買う量を減らす必要はない。OpenAI も、管理の対象になったコンピュートは "valuable and flexible"(価値があり柔軟)なままで、社内のほかの用途に流れると書いている。使用量を減らしうるのは 30 日の停止だけで、それも数週間に限られる。だから本誌の推論では、融資元はペース配分のニュースを理由にコンピュート需要の見通しを下げなくてよい。
  • 政策・法務の担当者: Schiff と Banks の法案が成立すれば、司法長官の手元に初めて各社の書面のペース配分計画がそろい、評価者の報告書と突き合わせられる。

この判断を覆す条件

観察期間は本誌が独自に設けたもので、2027 年 3 月 15 日までである。本誌は 9 月 15 日の日報で、ペース配分のうち外から確かめられるのは誰が中に入って見られるかであって、どれだけ速く進むかではない、という判断を載せた。本稿はその判断を分解して検証し直したもので、観察期間はその判断の 6 か月の期限をそのまま使う。

1. 見立てで挙げた報告書が観察期間内に出る。 その場合、第 4 節の「外から見えるのは粗い推計だけ」は成り立たない。

2. あるペース配分協定が速度(たとえば発表間隔)かコンピュート使用量の上限を書き込み、反トラスト上のセーフハーバーも政府の承認も得ないまま実行される。 その場合、第 5 節の三段は誤りとなる。

3. OpenAI がほかの区分がどのモデルかを公表し、どれも次世代モデルづくりに使われていない。 その場合、移されたコンピュートは能力を押し進めておらず、第 3 節の「約 2%」はこのブレーキを小さく見積もっている。OpenAI がどれだけ遅らせたかを判断したい人は、削った約一割五分で読むべきだ。

付録:数字の出どころ

三組の数字の照合

数字出したのは誰か何を測っているか確かめるには何が見えなければならないか
外部顧客に 70%、安全研究に 25%、九か月AI Futures Project、提案の一か月前コンピュートの分け方、研究開発に使うモデルの古さ社内のコンピュート一つひとつが実際に何を動かしているか
Astra 区分 59.2% 減、ほかの区分 17.2% 増OpenAI 自身、提案の六日前強化学習コンピュートの Astra 区分とほかの区分への配分同上。加えてほかの区分とはどのモデルか
三十日一人の下院議員どれだけ止めるか会社が本当に止めたか、何を止めたか
  • AI Futures Project の記事は、米国のフロンティアのペースをどう配分するかを題にしたもので、選択肢を四つ挙げている。比率を示したのは二つ目、九か月を示したのは三つ目だ。記事はこれらの比率から能力の進展への影響も試算しているが、それは推計した帰結であって、約束された速度の上限ではない。
  • Tunguz の原文は、五つの陣営はどれも帰結に値札を付けたが "none named a speed" というものだ。
  • Noam Brown がインタビューで示した幅は、五割速くなるだけ、三倍、十倍の三通りである。Kokotajlo が曲線の例に挙げたのは、Epoch の能力指数(ECI)、タスクの長さ、プログラミングの加速である。Astra の ECI は 169 点で、評論家 Zvi Mowshowitz は OpenAI のトレンドラインにちょうど乗っていると書いた。Kokotajlo と Thomas のやりとりの出どころは Mowshowitz による転載である。
  • Whitesides の呼びかけの出どころは、評論家 Zvi Mowshowitz による転載である。9 月 15 日という日付は、投稿の URL にある番号から割り出した。Whitesides はワシントン・ポストにも寄稿しているが、その原文は本稿の調べた範囲に入っていない。

OpenAI の割り当ての検算

その週より前の Astra 区分の割り当てを A、ほかの区分を O とする。

  • ほかの区分の増加量=0.172×O、Astra 区分の減少量=0.592×A。
  • 前者は後者の 85% にあたるので、O≈0.85×0.592÷0.172×A≈2.9A。
  • Astra 区分が総量に占める割合は A÷(A+2.9A)で、約四分の一。
  • 総量の純減は 0.592A−0.85×0.592A≈0.09A。総量の約 3.9A で割ると、約 2%。

前提は、「85% を埋め合わせた」が割り当て量の比を指し、二つの百分率が同じ基準期を使っていることだ。原文の文意はこれを支持するが、明記はしていない。基準期が違えば数値は変わるが、二つの分母による差は一桁以上のままである。59.2% は 8 月 7 日からの 1 週間の数値で、7 月 20 日以後の期間にあった二週間の停止とは別の出来事だ。約 2% の分母は OpenAI が分析した強化学習コンピュートで、会社全体ではない。

OpenAI の同じ記事にある他の数値として、研究者が AI のプログラミング用ツールで使う計算は、公開価格で換算すると 8 月半ばには一人一日あたり中央値で 600 米ドルを超え、利用量の上位一割では一日 7,000 米ドルを超える。OpenAI の結論は、新たな管理を入れてもコンピュートは "remains valuable and flexible"(価値があり、融通がきく)で、社内のほかの用途に自然と振り向けられる、というものだ。そのうえで、AI の進展速度を論じるときには、管理下に置かれたコンピュートの使い道も論じるよう提言している。コンピュートがよそに移されたことを、会社が自ら書いたことになる。

5,170 億米ドルという数字の範囲

外からコンピュートの総量が見える一例である。報道によれば、Anthropic が十一か月のあいだに結んだコンピュート契約の価値は最大で 5,170 億米ドルにのぼる。元の報道は 9 月 7 日の有料メディアの記事で、本稿の根拠は複数メディアによる引用である。引用の整理によれば、この数字にはオプション、意向書、枠組み合意が含まれ、確定した支出ではない。対応する電力規模は少なくとも 14.8 ギガワットとされるが、換算方法は非公開で、本誌による検算はない。

法的リスクの三層(本誌の読み)

調整する対象法的リスク確かめるのに何が要るか
アクセス権、評価基準低い。司法省はサイバーセキュリティでの協力に好意を示した評価者の報告書
コンピュートの配分比率中程度。基準にも生産制限にも見え、法的には答えの出ていない問題中に入れる評価者
能力が前に進む速度高い。生産制限の申し合わせに最も近いペース配分をしない場合の速さが誰にも分からず、確かめようがない
  • 「低い」の行の根拠は、一紙が伝えた司法省の発言だけで、しかも話はサイバーセキュリティでの協力である。司法省の講演原稿は本稿の根拠に含まれていない。報道は、Woodward が、業界がペース配分のために製品の安全とサイバーセキュリティのパラメータを調整する際に司法省の監督を受けるよう求めたわけではない、と明記している。
  • ワシントン・ポストのニュースレターは、上院議員 Jim Banks の公式サイトに転載されたものを本稿の根拠とした。OpenAI の記事のあの節の見出しは、Amodei の提案より六日早く「ペース配分」(pacing)という言葉を使っていた。
  • Calidas は同じ発言のなかで "Whether or not it falls under one of these exceptions for standards is an open question." とも述べた(標準づくりの例外に当たるかどうかは答えの出ていない問題だ、という意味)。
  • 業界団体 SIIA の Paul Lekas は、Amodei の文章にある協力には明確なセーフハーバーが必要だと述べた。OpenAI が評価者で同じことをするという話は、9 月 18 日の時点で実行された形跡が見当たらない。Ferguson の発言の出どころは引用記事である。Woodward は、司法省が既存のサイバーセキュリティ協力の指針を改めるかどうか検討しているとも述べた。
  • フロンティアモデルの評価を請け負う機関 FAR.AI は、フロンティア企業が評価の過程を過度に管理しようとしたため、契約を断ったことがある。これは同機関の Adam Gleave の話である。評価者はふつう一般の請負業者として扱われ、最終的に何を公表できるかは会社が決める。TechCrunch は、評価者がふつう厳しい秘密保持契約を結ぶことも記録している。
  • 本誌は 9 月 17 日、米大統領が AI による人類滅亡のリスクをでっち上げと呼び、副大統領が業界の規制要求をトロイの木馬になぞらえたことを受けて、「政府がペース配分のために反トラスト上の取り決めを示す」確率を引き下げた。同じ週に司法省と取引委員会が逆の方向を向いたので、この引き下げは幅を狭める必要がある。
  • 公開書簡は、世界はいまその道具を持っていないことを理由に挙げた。元 OpenAI 政策研究責任者の Miles Brundage は 8 月 21 日の寄稿で、各社の監査を減速を実際に守らせる要と位置づけ、減速を検証するのに必要な技術への投資を、先に着手できることに挙げた。

そのほかの数値と発言

  • 第 3 節の図はほかの区分を青で描いている。この件を長く追ってきたあるポッドキャストのホストは、総量のレベルでは青い部分の中身が分からないと指摘した。
  • 非営利団体 SaferAI の CEO は、自主的な措置はいつまでも企業の善意しだいであり、外に対して説明責任をまったく負わないまま、独自の柔軟なルールがあると言うことはできないと述べた。
  • DeepMind の Hassabis が提案しているのは別の業界標準化団体で、評価者を常駐させることではない。
  • OpenAI の CEO が 9 月 12 日に述べたのは、自社も同じことをする、近くさらに話せることがある、という内容だった。OpenAI が 9 月 16 日に公表したのは別のもので、モデルの振る舞いが意図から外れたときの開示の枠組みである。開示するかどうかは社内の安全諮問グループが決め、外部の審査は入らない。
  • TechCrunch の原文:"Neither company has shared which evaluators they'll work with, when they will be embedded, how many they'll bring on, exactly what systems and information they will be able to access or what can be disclosed to the public, despite repeated questions from TechCrunch."
  • 評価者をどこから連れてくるのかも問題である。METR 一社では手が回らないと書いた評論家もいれば、METR はシリコンバレーの身内だと言い切る評論家もいる。本誌には以前からの別の判断がある。調べる側と調べられる側が、同じ人材プールから来ているというものだ。
  • 報道によれば、上院商務委員会は 9 月 23 日に AI 法案を審議する可能性がある。
  • 9 月 15 日の判断は、資本市場の観察点も二つ挙げていた。OpenAI が今年の上場の窓を見送ったこと、Anthropic が十一か月で結んだコンピュート契約である。どちらも訓練と推論を区別できず、内訳が公表されるまでは、どこか一社がペースを落とした、あるいは落としていないことの証拠には使えない。

本稿が 9 月 15 日の判断に加えたもの

第一に、「誰も数字を示していない」を確かめ直し、数字を三組見つけた。なかでも OpenAI の割り当てデータは提案より六日早く同社の公式ブログに載っていたが、本誌は当時それを記録に加えていなかった。第二に、「どれだけ遅くしたか」の分母を分けた。同じ割り当て図でも、Astra 区分を分母にすれば約六割の減少、分析対象の強化学習コンピュート総量を分母にすれば約 2% の減少になる。第三に、この判断を覆す条件を、そのまま答え合わせできる形で書いた。

本誌が追うトレンドライン

本誌は一本の線を追っている。AI 企業が自社のモデルは安全だと言うとき、それを誰が検証しているのか、である。9 月初めに扱ったのは、モデルの思考を監視する物差しを誰が測るかだった。本稿は同じ問題の一段上を扱う。会社がペースを落としたと言うとき、誰が、どの分母で測るのか。

監視可能性はただで付いてくる、と見なされていた時期(2025-03~2026-06)モデルは自分の思考の連鎖を制御できない、だから別のモデルに読ませれば悪い意図を捕まえられる;発表元の自社研究二本はこれを「現時点で主要なリスクではない」と測り、同じ時期にこれがエージェントの不正を捕まえる業界の主力手段になった
判断を支える物差しの交代(2026-09)旗艦一世代のうちに、回避を指示された条件での検出率がほぼ全数捕捉から一桁台に落ちた;リリース文書には今も「思考の連鎖の監視」とあるが、実際に裏付けに使われているのは、より多くを見る別の監視に替わっていた——交代は宣言されず、新しい物差しには敵対条件下の数値がない

進行中 ?

経路A能力跳躍論(発表元自身の立場):監視可能性が落ちたのは知能が跳躍したからであり、思考の連鎖に最適化圧力をかけたからでも、アーキテクチャを替えたからでもない
経路Bアーキテクチャ論(外部の批判者):再帰や潜在空間での深い計算が、読めるトークンの外に計算を移しており、業界に数少ないレッドラインの一つを踏んでいる
経路Cアーキテクチャ無罪論(当事者の技術責任者と、最も技術に明るい独立評論家が同じ側):今世代のフロンティアモデルでも計算グラフの深さは四世代前の旗艦の二倍以内に収まり、層の再利用そのものは思考の連鎖を隠さない
経路D計測器交代論(本誌の九月五日の読み):原因をめぐる論争はいまは決着がつかず、しかも判断を支えていない;決着がつくのは、同じ文書のなかで判断を支える物差しが替わったことだ——劣化したのは思考の連鎖だけを読む監視器で、実際に裏付けているのはより多くを見る全文脈監視器であり、後者の数値はすべて、モデルが回避を指示されていない条件で取られている

本稿はこのトレンドラインのどこにあるか: 本稿は「誰が検証しているのか」を、モデルの思考の監視からペース配分へ広げた。ペース配分の唯一のデータも会社自身が描いた OpenAI の割り当て図で、外部の評論家はほかの区分の部分が読めないとはっきり述べている。「第三者による、企業をまたいで比べられる尺度ができる」という転換点は、ペース配分の軸でもまだ現れていない。

本稿が依拠した出典

以下は、本稿が引いた事実の記録から機械的にまとめた出典で、各行はそのうち一つの事実の出どころである。原文を本誌が読んだのか、報道経由なのかは、本文各段の説明に従う。

本記事は日本語版・英語版・中国語版と同一の調査と判断にもとづいて書かれています。出典にはリンクを付け、原文書と報道を区別し、確かめられなかった点を明記しています。

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他言語版が引いた出典

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